Infineonサイトを見ていたらハイブリッドインバーターのブロック図が記載されていました
基板のパターンを辿れば回路解析もできるんですが、積層基板で基板表面は樹脂コーティングされており、導通も探れないのでお手上げです(;´Д`)
ブロック図を基にHF2430S80-Hのパーツ構成を見て色々と考察してみました
HF2430S80-H ⇑メインボード表面 ⇓メインボード裏面
なお、細かいチップICについては型式も判別できないので詳細不明です。
AC回路について
AC回路に実装されているリレーはHF165FD-Gでコイル電圧12Vでa接点シングルです。
⇓ HF165FD-G データシート
AC入力リレーは商用充電時及びハイブリッド充電時のみ通電し、設定06とバイパス出力でOnOffが決まるようです。
AC出力リレーはインバーター出力時のみ通電
バイパスリレーは商用出力時のみ通電
HYPやASFに実装されている設定34の動作は
ToGRID:逆潮流有AC出力⇒バイパスリレーOn、AC出力リレーOn
ToLOAD:逆潮流無AC出力⇒AC入力リレーOn、AC出力リレーOn
※コントロールボードのスワップでHFでも設定34が実装可能と思われます。
エラー時にシステムダウンして各リレーが遮断されるとAC入出力間が遮断されるので停電となります。
24Vモデルでは、リレーはL相のみでN相側にはスイッチが無いのでAC入出力間でN相は接続されていることになります。その為、インバーター出力時でも商用電源のN相とは同電位になります。
以前下記記事で取り上げたRenogy製もサイズ的に中身は同じと思われるので24Vモデルには設定63は存在しないと考えられますが、48Vモデルではリレーが1つ追加されており設定63のN相出力を接地OnOffする為のリレーの可能性が濃厚です。
もしN相用リレーであればN相とアースの接続ではなく、単にN相の入出力間の接続の有無だけの切替ですね。
またリレーの接点容量は、100Vモデルで40A、200Vモデルで30Aで5kWモデルでも40Aのものが使われています。つまり5kWモデルでは実質4kWまでしか使えない事になります( ´;゚;∀;゚;)
これはHYP4850U100-Hで確認したのですが、メインボードはHF4850U80-Hと同等と思われるので、全てのモデルでも共通かもしれないです。
当方のModbus解析による推測になりますが、SRNE系ハイブリッドインバーターのModbusアドレスにはインバーター出力の最大電流が設定されており、
HYP(5kW100V)では42A
HF(3.3kW200V)では14.4A
HF(3kW100V)では25A
で制限されています。
5kWモデルといっても最大42Aなので40Aのリレーが使用されているという事でしょう。今のところフル稼働でも2kWを超えることがないので良いですが、Modobusのレジスタを弄って40Aで抑えられるなら変更しておいた方が良さそうです。
逆に3kW200Vモデルだと他のパーツの耐性次第ですが標準2.88kW出力を6kWまで増やせそうですが…6kWとなるとバッテリー側で単純計算で250Aとなってしまうので、ヒューズが飛ぶでしょう。上げても3.6kWまでですね。
そうなってくるとHF2430U60-100でも最大3.6kW出力が可能なのでは|д゚)?
昔流行ったPCのクロックアップみたいでハイブリッドインバーターの出力アップができたら面白いですね。
バリスタとEMIフィルターはどのモデルも入力側のみに設置されているようで、出力側にEMIフィルターは実装されておらず、インバーター出力時はノイズが出る可能性有りです。これはASF48100U200-Hを含むSRNE全機種と互換機全てに言えますね。
HYPでは入出力ケーブルにそれぞれフェライトコアが追加されています。
ACフィルターはインバーター回路側に直結されているので、システム起動時はずっと発熱しており、高負荷時は5kWモデルで70℃~90℃と一番の熱源です。
⇓ HYP4850U100-Hの商用充電時(強制吸気仕様)
定格入出力の約半分(商用充電30A⇒入力電流23A前後)の負荷で、
チョークコイルの温度は軽負荷48℃⇒中負荷66℃と軽負荷時よりも約20℃上昇
リレーの温度は軽負荷23℃⇒44℃とこちらも約20℃上昇
電解コンデンサの温度も軽負荷20℃⇒43℃と約20℃上昇
最大出力となれば各温度は更に20℃程上がります。
これは室温10℃で冷却方式を強制吸気仕様にした時のデータなので、ノーマル仕様であれば更に+10℃程度高いと思われます。
リレーの耐熱温度は85℃で国産パワコンでもリレーの故障は割と起きています。
電解コンデンサはの耐熱温度は105℃ですが、電解コンデンサの場合は、温度により時間寿命は決まってくるので、極力温度を下げる必要があります。
ちなみにASF48100U200-HやSPI-10K-Uでは不具合報告が多いようですが、5kWインバーターの全てのパーツが×2設置されているようで、熱源パーツ同士が隣接している為、単相2線式モデルよりも内部温度が上昇すると思われます。
⇓ ASF48100U200-H(SPI-10K-U)
チョークコイル下に配置されたACフィルター用コンデンサHAPK
⇓ HAPK データシート
このコンデンサは100Vモデルには180V、200Vモデルには300Vの定格電圧の物が使用されているので、100Vモデルで200V出力は不可能ということが判ります。
逆に200Vモデルでは100V出力が可能ですが、Modobusアドレスでレジスタ設定値が14.4Aとなっているので、理論上1.44kWしか使えないことになります。
Modobusで設定を弄ってやれば出力アップできる可能性はありますが…インバーター回路の耐久性次第ですね?
バッテリー回路について
バッテリー入力側にリレー等のスイッチは実装されておらず、BAT端子直上に大容量の電解コンデンサが実装されているので、充電された状態で端子間の短絡は危険です。
マイナス側に接続されている150Aヒューズは逆接続保護用なので、バッテリー接続を間違えると切れます。
バッテリー入出力にもブロック図に記載されているようなEMIフィルターは実装されていません。
HF2430S80-HにはSTB-HA/Aという電流センサーがバッテリーとPVのチョークコイル付近に実装されていますが、HF2430U60-100には設計が古い為か全く実装されていません。
⇓ STB-20HA/A データシート
また、5kWモデルではバッテリー、PV、ACの各チョークコイル付近に実装されており、これで電流を測定しているようです。
DCDCコンバーターにはMOSFETが8個実装されており、48Vモデルでは16個実装されています。48Vモデルの型式は未確認ですが恐らく同じと思います。
⇓ 24Vモデルに使用されているMOSFET(IRFB4110)データシート
PV回路について
HF2430S80-Hや48V系には増設ボードにサージプロテクターとEMIフィルターが実装されていますが、HF2430U60-100には実装されていません。
PV入力付近の基板裏面にチップヒューズが実装されおり、逆接続保護と思われます。
PV入力ができなくなった場合は確認してみると良いでしょう。
違っていたらごめんなさい(;´・ω・)
⇓ HF2430S80-Hのメインボード裏側
HF2430U60-100のPV側DCDCコンバーターに使用されるMOSFETは3種類あり、
HY3312 x2個
GP210N20S x3個
IRFB4115 x3個
同じ3kWモデルのHF2430S80-HではPVが高電圧仕様の為かIGBT(NCE60TD65BT)が2個実装されているだけです。
HYP4850U100-HのではHF2430S80-Hと同じ高電圧仕様ですがIGBT(STGWA40H65DFB)が3個実装されています。
またメインボード上には制御用DC-DCコンバーター(推測)に2種類のMOSFET(IRF640、OSG95R1K2P)が実装されています。
⇓ IRF640 データシート
⇓ OSG95R1K2P データシート
HF2430U80-Hの追加PVボードにはOSG95R1K2Pが増設されています。
HYPやHF48系にも増設ボードにMOSFETが増設されていますが型式は未確認です。
インバーター回路について
HF2430U60-100のシステム電圧は300Vで商用充電時は325V
HF2430S80-HやHYP4850U100-Hのシステム電圧は400Vで商用充電時は450V
商用充電の際はバッテリー電圧が乗る感じで、通常はバッテリー電圧に比例して増減します。
システムスタンバイでは3.3V、AC入力のみだと100V、PV入力のみだとPV電圧がシステム電圧となります。
つまりバッテリー電圧だけがシステム電圧として昇圧され、AC・PV入力はシステム電圧に調整されているだけとなります。
システムスタンバイの状態ではバッテリーを降圧し最小限の電圧で待機します。
エラーでシステムダウンした場合は、AC・PVの電力が100Vに達するとシステムを起動し、バッテリー電圧をシステム電圧まで昇圧させ稼働を開始します。
100Vモデルに使用されているIGBTはCRG75T60AK3HDで、HF2430U60-100には10個実装されています。
5kWモデルのHYP4850U100-Hでは14個実装されています。
充電回路で4個使用しているので、3kWでは6個、5kWでは10個をインバーター回路で使用していることになり、1kWあたり2個のIGBTで賄っていることになります。
⇓ CRG75T60AK3HD データシート
200VモデルのHF2430S80-HではPVのDC-DCコンバーターと同じNCE60TD65BTが9個実装されています。
同じように考えると、インバーター回路に5個IGBTが使用されていますがこちらは3.3kWなのでよくわかりません(;´・ω・)
メインボード裏面にはインバーター用に東芝製のゲート用フォトカプラTLP350が実装されています。知ってるメーカーだと少し安心感がありますね。
⇓ TLP350 データシート
その他
通信I/F
1緑⇒RS485-6:B2(HF2430U60-100はCAN-L)
2赤⇒RS485-5:A2(HF2430U60-100はCAN-H)
3黒⇒RS485-8:B1
4白⇒RS485-7:A1
5緑⇒RS485-1:+5V
6赤⇒RS485-2:GND
7無
8白⇒ドライノード
9緑⇒ドライノード
10赤⇒ドライノード
USBについてはRS485-A1B1をCH340でUSB変換しています。その為、USBとRS485Wi-Fiモジュールを同時に接続すると不具合がでます。
CANI/F
19⇒CAN-L
20⇒CAN-H
こうして見ると24V3kW100Vモデルはお手頃価格ですが細かい部分で回路が省略されており手抜きだなって感じます(;´・ω・)
余談ですがLi timeからもSRNE系ハイブリッドインバーターが販売されてますね。
【75,199円限定、割引自動適用】48V3000W ハイブリッド インバーターjp.litime.com
こちらのハイブリッドインバーターは使用を見る限りではHF4830U80-145でLvyuanやRenogyのように24V仕様ではなく48V仕様です。
また3kW出力ですが、PVは60V~145Vの80AコントローラーなのでPV入力は最大4kWとなっています。
ただ、8万円近く出すなら5kWモデルを購入した方が良いかなって思いますけどね。